1級自動車整備士は整備士資格の中でも最上位の資格であり、難易度が高い職種でもあります。
しかし、誰でも取得できるものではないからこそ、今後整備士としてキャリアアップを目指す方には、重要な資格です。
また1級整備士は、自動車整備以外の職種にもかなりの需要があります。
そこで、今回は「1級自動車整備士」についての仕事内容や資格を取得するメリット、試験の難易度、取得までの流れについて解説します。
1級自動車整備士とは?
1級自動車整備士とは、総重量8トン未満、最大積載量2トン以下、乗車定員10名以下の普通自動車と四輪・三輪の小型自動車、軽自動車の整備ができる資格です。
さらには、ハイブリッドカーや電気自動車をはじめとした次世代型自動車に用いられる新技術の知見も深まります。
実は2002年までは、1級整備士の資格試験は実施されたことがなく、現在の2級整備士が整備関係の中で最上位の資格でした。そのため資格保有者の割合は、現在でも2級整備士のようにそれほど多くはなく、2019年度の実績ベースでは、全国で約34万人いる整備士の中で1万5,000人ほどと全体の約4%未満の数字になります。
ただし近年見られる次世代型自動車の普及により、1級整備士の需要と価値が高まっているため、「自動車整備士として、将来的により活躍していきたい」と考えている人は資格取得を前向きに検討することをおすすめします。
1級整備士の仕事内容
1級整備士は整備士業務全般を担うとともに、同じ環境で働く整備士や工員への指導、安全管理などを担当し、経営視点からマネジメント業務を行うこともあります。顧客対応では、安全管理や環境保全についてアドバイスを求められることもあったりと、実際の作業以外にも業務の幅が広がるため、やりがいも高まります。
ただし、整備後の車が国の定める保安基準に満たされているのかを最終確認する検査業務の仕事は、自動車検査士の資格を保有した自動車検査員が専門的に行うため、1級自動車整備士でも行えません。
1級整備士の資格の種類
1級整備士の資格には以下3つの種類があります。
1級小型自動車整備士
1級小型自動車整備士は、以下の整備に関する高度な知識と技術を持ち、整備を実施できる上級技術者資格です。
- 総重量8トン以下、最大積載量2トン未満、乗車定員11名以下の普通自動車
- 総重量8トン以下、最大積載量2トン未満、乗車定員11名以下の四輪、三輪小型自動車
- 総重量8トン以下、最大積載量2トン未満、乗車定員11名以下の軽自動車
1級大型自動車整備士
次に1級大型自動車整備士とは、以下の整備に関する高度な知識と技術を持ち、整備を実施できる上級技術者資格です。
- 総重量8トン以上、最大積載量2トン越え、乗車定員11名以上の大型自動車
- 総重量8トン以上、最大積載量2トン越え、乗車定員11名以上の大型特殊自動車
- 総重量8トン以上、最大積載量2トン越え、乗車定員11名以上の普通自動車
こちらの資格は、現在資格取得のための国家試験が行われていません。ただし、物流業の発達により大型トラックの需要が高まっている現在の社会状況から、今後試験が実施される可能性もあります。
1級二輪自動車整備士
1級二輪自動車整備士は、二輪整備士としての最上位の国家資格になりますが、こちらも資格試験が開催されたことはありません。そのため、実質的に2級二輪整備士資格が二輪自動車の中で最も上の位置づけになります。
なお、将来的な試験開催については未定となっています。
1級整備士の資格を取得する3つのメリット
1級整備士の資格を取得するメリットは3つあります。
メリット1.自動車整備士としてキャリアアップを目指せる
1級整備士はガソリン車だけでなくディーゼル車やその他整備箇所について高い技術力と知識を備え持つ有資格者です。さらに、近年需要が高まりつつあるハイブリッドカーや電気自動車、水素自動車などの特殊な車の整備も対応できるため、自動車整備士としてキャリアアップを目指せます。
ガソリン車から次世代型自動車へと段々シフトされている近年、今後1級整備士の需要が伸びていくのはほぼ確実といわれており、整備士ひとりひとりの価値が重要視されていきます。そんな中、もし1級整備士の資格を取得していれば、時代の変化へ柔軟に対応した希少価値の高い人材になれるでしょう。
メリット2.転職や就職で有利になる
1級自動車整備士資格は資格を所有しているだけでも自分の技術力と知識の高さをアピールできる武器になります。対応可能な車種も多く、知識と技術面において高いレベルが期待できる人材は、企業側からしても喉から手が出るほど欲しい存在です。
そのため転職の進め方によっては、現在働いている環境下よりも良い条件と待遇で勤務できる可能性も考えられます。
整備士としてのキャリアの選択肢を1つでも広げるためにも、ぜひ取得を目指して欲しい資格です。
メリット3.給料が上がりやすい
企業によっては、1級整備士の資格を取得することで資格手当の支給があります。たとえば、資格手当として月に1万円が支給される、資格取得時にお祝い金として20万円支給されるなどです。そのため、給与面を重視している方にとっては、1級資格はぜひとも保有しておきたい資格です。
1級自動車整備士の資格難易度と合格率
以下に、1級整備士資格試験の受験者と合格率についてまとめています。
筆記試験 | 項目 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
受験者数 | 3,403人 | 2,825人 | 2,529人 | 2,341人 | 2,456人 | |
合格率 | 49.3% | 52.7% | 61.1% | 59.0% | 53.0% | |
口述試験 | 受験者数 | 1,682人 | 1,554人 | 1,592人 | 1,397人 | 1,364人 |
合格率 | 95.2% | 96.4% | 99.2% | 95.1% | 97.6% |
筆記試験の合格率は過去5年間で平均54.56%と約半分ぐらいですが、口述試験の合格率が90%以上なので、筆記試験に合格してしまえば取得するのはそこまで難しくはないでしょう。
そのため試験対策をする際には、筆記試験の対策を優先的に行うのが得策だと思われます。
1級整備士になるには?試験内容と受験条件について
1級整備士になるためには、日本自動車整備振興会が実施する「自動車整備技能登録試験」を受講する必要があります。
登録試験に合格後、2年以内に全免申請を行えば自動車整備士の国家資格を取得できる流れです。
1級整備士の試験内容と受験料
1級自動車整備士の試験内容は大きく学科試験と実技試験に分けられます。また、学科試験はさらに筆記試験と口述試験に分かれています。
1級整備士の試験内容や受験料は以下のとおりです。
学科試験 | 実技試験 | ||
項目 | 筆記試験 | 口述試験 | |
試験日 | 3月 | 5月 | 8月 |
受験料 | 9,300円 | 14,000円 | |
試験時間 | 100分 | 10分 | 40分 |
出題数 | 50問 | 2問 | 4問 |
試験内容 | ・構造、機能及び取り扱い法 ・点検、修理、調整及び完成検査の方法 ・整備用機械に関する初等知識 ・整備用の試験機、計量器及び工具の構造、機能及び取り扱い法 ・材料及び燃料油脂の性質及び用法 ・図面に関する一般知識 ・保安基準その他の自動車の整備に関する法規 | ・基本工作 ・点検、分解、組み立て、調整及び完成検査 ・修理 ・整備用の試験機、計量器及び工具の取り扱い |
:自動車整備技能登録試験のご案内(令和5年度)
1級整備士の試験は1年に1度行われます。学科試験は、3月に1次試験である筆記が実施され、全50問を100分で解答する形式です。筆記試験終了後、5月に2次試験である口述が実施され、全2問10分で解答する形式です。
口述試験終了後は、8月に実技試験が実施されます。
1級自動車整備士資格の受験条件
1級整備士の試験を受験するためには、以下のいずれかの条件に該当する必要があります。
- 2級整備士の資格取得後、整備士として3年以上の実務経験がある
- 自動車整備関連の大学や専門学校の1級整備士養成課程卒業者である
1級整備士養成課程の学校に通っている場合、卒業と同時に受験資格がもらえるため、実技試験を受ける必要はありません。
1級自動車整備士の活躍場所とは?
1級自動車整備士の免許を取得していれば整備全般の作業内容はもちろんのこと、職場の管理や後輩の指導・育成に回れる可能性が高くなります。
ディーラー整備士であれば、整備主任的な存在として他の整備スタッフを引っ張りつつ、お客様に対して最新安全技術の情報提供やコンサルタント的な役割も期待でるでしょう。
整備士以外では、メーカーのエンジニアやバス、タクシー会社の保守点検を行うスタッフとしても幅広いニーズがあります。以下は、1級自動車整備士の活躍場所の具体例です。
- 整備工場の役職
- 国産車や輸入車のディーラー
- 自動車メーカー勤務
- 部品メーカー整備
- 重機メーカーの整備
- カスタムショップの整備
- タクシー会社の整備
- バス会社の整備
- 運送会社の整備
自動車の動力の多様化と安全性能装置の技術力は今後も確実に進歩していきます。そのため環境問題の技術や進歩に対応できる1級資格取得者が1人でも入れば、企業としてもこれほど助かることはありません。
まとめ
1級整備士を取得すると、電気自動車や自動運転など最新の技術に関する知見を深めることが可能です。そのため、自動車業界を取り巻く環境の変化にも対応でき、ニーズの高い国家資格といえます。また、整備作業だけではなく管理者としての立場も求められることから、業務の幅が広がり、転職においてもアピールポイントとなるでしょう。
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