自動車整備士の人手不足問題とは?整備士確保に向けた取り組みや将来性について解説

自動車整備士は、車の整備や点検を行う仕事であり、私達のカーライフの中でも重要な職業でもあります。

しかし、過酷な労働環境や賃金の安さを理由に、整備士は現状減少傾向にあるのは事実です。
そこで今回は「整備士が不足している理由」や「今こそ整備士を目指すべき理由」について解説します。

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【年度別】整備士が不足している現状と推移

まず、自動車整備士の減少数を下記表にて確認してみましょう。

【年度別】【整備士の数】
2017年(平成29年)度33万6,360人
2018年(平成30年)度33万8,438人
2019年(令和元年)度33万6,897人
2020年(令和2年)度33万9,593人
2021年(令和3年)度33万4,319人
2022年(令和4年)度33万1,681人

上記、表を確認すると整備士の数が減少傾向にあることが分かります。

2020年度にはやや整備士の数は増加しました。ただ、2021年度からはそれまでよりもさらに数が減少しており、最新の2022年度には2020年度から8,000人近い整備士の減少が見て取れます。

整備士の数が減少しているのは事実で間違いなさそうです。

整備士が不足している具体的な理由とは?

整備士が不足している具体的な理由は主に2つ考えられます。

  • 車に対する価値観の変化
  • 経済的理由による購入希望者の減少

上記、2つの具体的な理由に共通しているのは、やはり「若者の車離れ」も原因として挙げられます。
車は購入するものではなく、必要な時に必要な時間だけ借りるものと認識されつつあります。そのため、車を必要としない人が増え、結果的に整備士の数が減少傾向にあるとも言えるでしょう。

車に対する価値観の変化

車が日常生活において欠かせないと言われていた時代では「車に乗ること自体がその人のステータス」として認識されていました。
しかし、現在では「車に対するステータス」は薄れつつあり、電車やバス、タクシーなどの交通網を移動手段として利用する方が年々増加傾向にあるのも事実です。また、最近では自動車を持つこと自体に意味を感じていない若者も増えてきています。

結果的に車に対する考え方が変化していることで「整備士になろう」と考える方も少なくなっているとも言えるでしょう。

経済的理由による購入希望者の減少

最近の車には、バックモニターや自動運転装置、最先端の安全性能装置なども装備されているのが当たり前の時代になりました。そのため、数多くの先進技術が搭載されていることもあり購入費用が車両価格だけで200万円を超えるケースも少なくありません。

200万円を超える購入費用に加えて、自動車保険や駐車場代、車検代など車を所有するだけでも高額の維持費が必要になります。経済的な理由から車の購入を諦める方もゼロではありません。中には、車の購入をためらっている方もいます。

結果的に経済的な理由による若者の車離れや少子高齢化が加速している事情もあり、自動車整備士の数が減少しているとも言えます。

国による整備士確保に向けた取り組み

国は、整備士が年々減少しているこの状況を危惧し、整備士確保のために様々な取り組みを行っています。

労働環境の見直し

自動車整備士は、決して清潔・快適とは言えない環境の中で汚れながら作業をしたり、力を要する作業をしたりします。そのため、「どちらかと言うと男性が行う仕事」というイメージが定着していました。そのような背景から、女性の働きやすさにまだ課題が残っています。

国土交通省は、女性が働きやすい環境作りの推進のためにガイドラインを定め、整備士が働きやすいような労働環境・職場整備を目指しています。

たとえば、「工具・機器の改善」です。同じ作業の場合でも、男性より女性の方が身体的負担を感じやすいです。そこで、ガイドラインでは作業工具や機器の軽量化・コンパクト化などを挙げ、負担を軽減できるよう改善を促しています。

また、「設備面の改善」という点で、工場内の空調設備(冷暖房)の改善や、トイレや更衣室などを男女別にするという整備もガイドラインで定められています。

資格取得における給付金制度

厚生労働省は「教育訓練給付制度」という制度を用意しており、対象資格に対して講座受講料の20%~最大70%を補助しています。
これは各個人がしっかりとスキルを身に付けて働いていくための支援で、自動車整備士をはじめ、専門的な知識や技術を要する資格のための受講が補助されます。

人材確保・人材定着

国土交通省では、自動車整備士という仕事の魅力を伝えるため、以下のような活動を行っています。

  • PRポスターを作成する
  • 自動車整備人材確保・育成推進協議会と協力し、高等学校を直接訪問して自動車整備の仕事に関する説明を行う
  • 関係業界と連携し、自動車整備業経営者向けの人材確保セミナーを全国で行う

また、国が行っているわけではありませんが「年収の見直し」も整備士確保・定着に向けた取り組みの1つです。これは、各自動車整備会社が会社の実情に合わせて行っています。

整備士が不足しているからこそ年収は増加傾向にある!

車に対する価値観の変化など、様々な理由から整備士の需要や将来性に対して不安を抱いている方は少なくありません。

自動車整備士の数は年々減少傾向にあると説明していますが、整備士の数が減少しているからこそ、需要が高まり年収は毎年増加傾向にあります。

下表は年度別の自動車整備士の平均年収になります。

【年度別】【自動車整備士平均年収】
2017年(平成29年)度約388万円
2018年(平成30年)度約391万円
2019年(令和元年)度約392万円
2020年(令和2年)度約396万円
2021年(令和3年)度約399万円
2022年(令和4年)度約404万円

上記表をみると、2017年〜2022年にかけて自動車整備士の平均年収は増加傾向にあることが分かり、2022年では、400万円台まで平均年収が上がっています。

また、あくまで上記表は役職クラスではなく、一般社員時の平均年収であり、整備士としてキャリアアップに成功すれば平均以上の年収をもらえる可能性も考えられます。

整備士の数が減少しているからこそ、企業側からしても「整備士の確保と繋ぎ止め」に必死な状況です。そのため、整備士として価値の高い人材になれば現在働いている職場や転職した場合でも良い条件で働くチャンスが増えるでしょう。

自動車整備士の気になる将来性は?

結論から言うと、自動車整備士の将来性はあると言えます。なぜなら、自動車はインフラ整備がされていない地域に住んでいる人にとってまだまだ必須であり、今後自動車の利用数が激減する見込みは低いためです。

ただ、時代の流れに合わせた知識やスキルのアップデートも求められます。今までのガソリン自動車に加え近年では電気自動車(EV)も普及してきており、このような新技術にも適応可能な整備士が重宝されるでしょう。

自動車整備士の将来性について、詳しくは以下記事で解説しています。気になる方はこちらをご覧ください。

自動車整備士に将来性はある?人材不足の現状と転職を成功させる方法

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今後、整備士を目指す4つのメリット

今後、整備士を目指す方に向けて「整備士を目指すメリット」を4つ紹介します。

  • メリット1. 労働条件や待遇の改善
  • メリット2. 自動車技術の発展に伴い整備士として働く希少価値の高さ
  • メリット3. 職場環境の改善
  • メリット4. 大手ディーラーへの就職率がアップする

整備士が減少傾向にある今、今後自動車整備士として働く側にも多くのメリットが考えられます。

メリット1.労働条件や待遇の改善

「自動車業界で働く」と聞くと、休みが少なく過酷な仕事とイメージされる場合が多い傾向にありました。しかし、近年では働き方改革によって、労働者環境や待遇の見直しについても企業側がサポートしてくれる環境へと変化しています。

働き方改革の影響は「自動車整備士」についても同じです。
整備工場や町工場も一般サラリーマンと同じく、平日は勤務して土日祝日を休むという働き方も可能になります。また、大手ディーラーでは、毎週決められた定休日があり、しっかりと体を休める環境作りもできるでしょう。

最近では、暑さ予防のため冷却ファンやアイスベストなどのアイテムを導入する企業も増えています。過酷な労働環境からの脱却を目指して、企業としても改善が図られている状況です。

メリット2.自動車技術の発展に伴い整備士として働く希少価値の高さ

車業界では近年、電気自動車やハイブリッドカーが主流になりつつあります。さらに最先端技術を搭載した車も開発され、ますます車の高性能化が進んでいる状況です。

そうした多くの先進技術を搭載している車が多いからこそ、いざという時には整備士の腕やスキル、経験が必要になります。そのため、今後将来的に整備士という仕事がなくならず、むしろ需要が年々高まる可能性が高いです。

整備士になるメリットとしても、より良い条件の下で働く職場環境を整えられて生活も安定しやすいでしょう。
「手に職を付ける」という観点からも一定以上の需要とニーズが求められる職種です。

メリット3.職場環境の改善

整備士としての労働環境の改善も行われるメリットが期待できます。

ひと昔前まで、自動車整備士は職場環境の設備が十分に整っておらず、夏は暑さに我慢しながら働くことは当たり前の状況でした。中には、職場環境の悪い状態で働き続けたことで体調を崩し、退職や休職を余儀なくされる整備士も少なくなかった時代です。

しかし、近年は自動車整備士の職場環境は改善傾向にあり、設備投資に力を入れる企業も増加しています。整備工場によっては暑い時期を乗り切るためにクーラー設備や補助機械の導入などを前向きに検討しています。

また、残業についても長く働くことが社会人として当たり前という昔ながらの風習から、業務量改善による残業の減少を呼びかける企業も多くあります。そのため、整備士として働く場合でも自分の労働対価に見合った報酬とやりがいを感じることができるでしょう。

整備士の待遇を見直すことで、自動車整備士という職種がより安定して長く働ける労働環境の向上にも繋がります。

メリット4.大手ディーラーへの就職率がアップする

今後、整備士は企業側からしても喉から手が出るほど欲しい人材になるのは変わりありません。それは大手ディーラーでも同じことが言えます。
大手ディーラーで働くことができれば、安定した年収と労働環境が整います。

また、自動車整備士の資格を所有していれば、なおさら大手ディーラーで整備士として働けるチャンスが高まるでしょう。

職種を選ぶ場合にも「仕事の安定感」は大切なポイントです。大手ディーラーで勤務することで、より安定した手に職をつけることができます。

自動車整備士として年収をアップさせる5つの方法

自動車整備士として年収をアップさせるには5つの方法があります。

  • 所属企業で年収アップの交渉をする
  • 上の役職にキャリアアップを目指す
  • 難易度の高い国家資格を取得する
  • 条件の良い職場に転職する
  • 独立して開業する

それぞれの年収アップ術について詳しくみていきましょう。

所属企業で年収アップの交渉をする

所属企業の経営者や上司に対して、年収アップの交渉を行うことは年収をアップさせる方法のひとつと言えます。企業としても整備士として貴重な人材に辞められると困る場合が多く、積極的に交渉に対応してくれやすいでしょう。

しかし、実際に整備士として年収アップの交渉を行う場合には「明確な根拠」が必ず必要です。
明確な根拠もないまま、年収アップの交渉を行っても、自分が納得する金額も条件が提示されない可能性が高くなります。

具体的な年収アップの交渉方法としては、これまで培った整備士としての経験や勤続年数、現在請け負う仕事量などをアピールしても良いでしょう。
他にも上級国家資格や昇級試験の結果も交渉材料の1つとして活用しても良いかもしれません。

交渉材料を準備しつつ、上司や企業に納得してもらえる自分だけの条件提示の方法を確立していくことをおすすめします。

上の役職にキャリアアップを目指す

自動車整備士にも現状の業務の延長に整備部長や管理職などの役職があります。
そのため、少しでも上の役職へのキャリアアップを目指すことも整備士として年収アップを目指す方法の1つになります。

日常業務の中である程度の知識と経験を積むことで、管理職に抜擢される可能性もあります。
さらに業務量をこなせるようになることで、部長や工場長にも昇進できる場合もあるでしょう。

今働いている企業で年収アップを目指す場合には、積極的に目指してほしい方法です。

難易度の高い国家資格を取得する

自動車整備士には、様々な国家資格があります。
そのため、国家資格を取得することで「資格手当」が支給され、今以上の年収アップも目指しやすいでしょう。

上級国家資格としては「自動車1級整備士」や「自動車検査士」などの資格があげられます。
より難しい資格を取得すれば、それだけ整備士としての人材価値は高まり、昇給も他の整備士よりも早く目指せるでしょう。

また、積極的に資格取得のために努力していることも上司の評価に繋がりやすくなります。
ただし、企業によって資格手当の条件や内容が異なるため、資格取得を目指す場合にはまず一度、どの資格を取得すれば手当が支給されるのかを確認してみましょう。

自動車整備士の資格には、自動車整備関係以外にも、特殊整備士や電気装置専門関係の資格も中にはあります。
そのため、ご自身に合う最適な資格を取得することもおすすめします。

条件の良い職場に転職する

自動車整備士の給料は民間整備工場と大手企業で差があります。そのため、より良い条件を提示してくれる企業への転職も整備士として年収をアップさせる方法と言えます。

整備士としてのこれまでの積み重ねてきた経験と知識をしっかりとアピールすることで転職活動をより成功させられます。また、整備士として難易度の高い資格を取得していれば、さらに条件の良い職場への転職も実現できるでしょう。

今では現在の仕事を続けながら転職活動を進める転職サイトも多数あります。
仕事を辞めてから転職活動を始めるより、現在の職場で働きながら条件の良い職場への仕事も探せるため、転職希望者にも損はないでしょう。

また、転職を意識する場合には、給料以外にも「福利厚生面」や転職先の雰囲気にも重視する必要があります。企業によって福利厚生は異なります。場合によっては給料の提示が良くても、福利厚生面が充実していない可能性も少なくありません。

職場の雰囲気については、転職サイトによって企業ごとの特徴や職場の雰囲気を正確に教えてくれるサービスもあります。

転職にはやはり多少のリスクもあるため、より慎重に転職活動を進めていきましょう。

独立して開業する

自動車整備士として同じ会社で働く場合でも、年収アップには限界があります。整備士として今以上に稼ぎたいと考える場合には「独立して開業する」ことも1つの方法です。

独立して開業する最大のメリットとしては、自分のやり方次第で年収を大幅にアップさせられることにあります。また、自分の頑張り次第で年収が決まるため、モチベーションアップにも繋がりやすいでしょう。

しかし、自分がいくら整備士として優秀であっても自動車工場の経営は1人では行えません。
整備士として有資格者が最低でも2人以上は必要なため、有資格者を雇うか共同経営する仲間を探す必要があります。

また、さらに年収をアップするには、自動車整備以外にも営業や経理など幅広い業務に対応できる体制を作ることで高収入を得られるチャンスが広がるでしょう。

まとめ

自動車整備士の数は現在も減少傾向にあるのは事実です。
しかし、毎年整備士の数が減少しているからこそ、整備士1人1人の力が企業としても必要になります。

整備士としてある程度の知識と経験を持ち合わせていれば、より良い条件の中で仕事を続けられるでしょう。
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