危険物乙4が人気な理由とは?試験の難易度や合格率も解説

危険物取扱者は、消防法で定められた「危険物」を取り扱う、または取り扱う際の立会いができる国家資格です。取り扱う危険物によって資格の種類が分かれており、取得の難易度も変わります。

この記事では、危険物取扱者の各種資格のなかでも特に人気の高い危険物乙4について、その人気の理由や試験の難易度、合格率などについて解説します。乙種以外の甲種や丙種との違いや合格のためのポイントについても紹介するため、この資格の取得を検討している方はぜひご参考にしてください。

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そもそも危険物取扱者乙種とは?

危険物取扱者とは、危険物の取り扱いや、取り扱いに立ち会う業務において必要となる国家資格です。工場などで危険物を取り扱う際には、危険物取扱者の免許保有者を配置しなくてはなりません。

危険物取扱者の資格は甲種、乙種、丙種の3つがあり、難易度によって扱える物質と対応可能な業務範囲が異なります。乙種においてはさらに第1類〜第6類まで細かく分かれており、取得した資格によってそれぞれ該当する危険物のみを取り扱うことができ、資格取得後6カ月以上の実務経験を積めば、危険物保安監督者になる資格を得られます。

乙種のなかでも第4類が人気のある国家資格で、第4類を取得するとガソリン・アルコール類を始めとする引火性液体の取り扱いができるようになり、自動車整備工場をはじめ、ガソリンスタンドやタンクローリーのドライバー、設備管理などの業務に従事可能です。 

危険物乙4は国家資格ですが、身近な石油類の取り扱い関係の試験であるため勉強もしやすく、企業からの需要もあるため高い人気があります。

丙種との違い

丙種は、危険物乙4の資格で取り扱える危険物のうち、ガソリンや灯油、引火点130℃以上の第3石油類・第4石油類、動植物油類など指定された危険物に限り取扱作業ができます。

丙種には取り扱えない危険物もあり、作業範囲も限定されますが、ガソリンスタンドのように丙種でも取り扱える危険物がある職場では活躍することが出来るでしょう。

丙種、乙種ともに受験するために必要な資格や条件は特にないため、こだわりがないのであれば乙種4類から受験することをおすすめします。

甲種との違い

危険物乙4の資格保有者は、灯油やガソリンを扱う施設においては危険物保安監督者になれますが、その施設の取り扱いに鉄粉などを含む場合にはなれません。

一方、甲種では全ての危険物を取り扱いできるため、特に大量の薬品を使用する工場などでは重宝されます。甲種の資格を取得すると、どのような危険物であっても以下の業務を行えます。

  • 取り扱い
  • 定期点検
  • 保安の監督業務
  • 危険物保安監督者に選任される資格の保有

ただし、乙種、丙種と異なり甲種に関しては受験資格が必要となり、誰でも挑戦できる資格ではありません。
受験資格は以下のとおりです。

  • 大学などで、化学関連の学科などを修めて卒業した人
  • 大学などで、化学関連の科目を15単位以上修得した人
  • 乙種危険物取扱者の資格を得たあと、実務経験を2年以上積んだ人

危険物乙4が人気な3つの理由

危険物乙4は、大きく分けて3つの理由から人気の資格となっています。

  • POINT1.需要が高く転職において有利になる
  • POINT2.給与が上がる可能性がある
  • POINT3.4類以外の乙種が取得しやすくなる

1.需要が高く転職において有利になる

危険物乙4を取得すると、転職の際の選択肢が広がります。たとえば、ガソリンスタンドに正社員として転職する際や、化学メーカーや印刷工場などへの転職の際にも、危険物乙4を取得しておけば技能として評価してもらえる可能性があります。

また引火性液体を扱うドライバーなど、危険物乙4の資格を取得していなければできない仕事もあります。これらの仕事は必然的に応募できる方が限られるため、資格を取得していることが必須となる転職には有利です。

危険物乙4の資格があれば、取り扱い可能な危険物を扱う多くの現場で即戦力になります。実務経験を積んで危険物保安監督者になればさらに需要は高まるでしょう。

2.給与が上がる可能性がある

企業によっては危険物取扱者の資格を取得することで、資格手当などの対象となって収入アップが期待できます。難関資格ではないため、手当の相場は数千円程度と高額ではありませんが、資格手当のつく会社であれば月々の収入を増やせます。

また、危険物乙4はアルバイトであっても時給のアップが期待できる資格です。特にセルフ方式のガソリンスタンドの場合では、危険物乙4の資格保有者によるモニターが必要であり、ほかのスタッフと比較して時給が高くなります。

3.4類以外の乙種が取得しやすくなる

危険物乙4を取得すると、4類以外の乙種の試験の際に「危険物に関する法令」や「基礎的な物理学及び基礎的な科学」の科目についての再受験が不要で免除となります。

「危険物の性質と火災予防・消火方法」の1科目のみを受験すればよいため対策がしやすく、効率的に勉強ができます。他の類の資格の取得を考えている方にとって、危険物乙4の取得は初めの一歩としておすすめです。

危険物乙4を活かせる仕事

危険物乙4は多くの企業で需要が高く、さまざまな活かせる仕事があります。ここでは、代表的な6つの業種についてどのように活かせるかを解説します。

自動車整備工場

自動車整備工場においては、自動車のメンテナンスのためにエンジンオイルやギアオイルなど各種オイルを使用します。これらのオイルは第4類の引火性液体に該当するため、取り扱うには危険物乙4の資格が必要となります。
自動車整備においては、自動車整備士の資格だけでなく、危険物乙4の資格を保有することで安全面にも配慮できます。

ガソリンスタンド

ガソリンスタンドでは、ガソリンや灯油、軽油などを貯蔵し、顧客に対して給油などのサービスを提供するため、ガソリンスタンドを運営するにあたり、危険物乙4の資格保有者の配置は必須条件です。特に近年増加している「セルフ式」のガソリンスタンドでは重宝されます。これは、一般の方が給油する際に現場の管理・監督をする立場として危険物乙4の資格保有者が必要なためです。

この管理・監督は丙種の資格では行えないため、危険物乙4を活かせる仕事です。

タンクローリー

タンクが載った大型車の運転業務です。タンクローリーはガソリンなどの引火性液体を輸送するため、タンクローリーを運転する際にはドライバーもしくは同乗者が、甲種、丙種、乙種4類のいずれかの有資格者である必要があります。

ガソリンや灯油を運ぶのみの業務では丙種の危険物取扱者でも対応可能ですが、取り扱いや立会いまでをこなす単独業務を行うためには乙種4類が必要です。

運転と危険物の取り扱いを一人でこなすことができる人材は、企業にとって大変価値のある存在です。

化学工場

化学製品には、石油やアルコールなどを原料とするものが多くあり、これらの引火性液体は事故防止の観点からも適切な管理と取り扱いが求められます。

メーカーによって取り扱う危険物が違うため必要な資格は異なりますが、業務上必要になるケースが多いため、乙種を取るように指示されることもあります。

石油貯蔵タンクがある企業

危険物乙4の資格を保有していれば引火性液体を扱えるため、石油の製造・管理を行う石油貯蔵タンクを持つ企業では重要な役割を担います。石油プラントや石油精製工場での業務が代表例です。

商品を大切に扱うことはもちろんですが、事故を防止するためには適切な管理や取り扱いが必要なため、専門知識を有する危険物乙4の資格保有者が責任を持って業務を担うこととなります。

ビル管理

ビルの特性として、引火性液体を燃料源とする非常用発電機が設置されている施設が一般的です。このようなビルでは、軽油などを燃料として使用するため、危険物乙4の資格は有用です。

さらに、ビルによってはボイラーを使用することもあります。ボイラーの燃料は重油を使うものが多く、危険物乙4に該当する燃料の貯蔵や取り扱いが頻繁にあります。そのため、ビル管理の業務では引火性液体の取り扱いができる危険物乙4の資格を活かせるでしょう。

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危険物乙4の試験内容

危険物乙4の受験科目や問題数は以下のとおりです。

試験科目問題数
危険物に関する法令15問
基礎的な物理学および基礎的な化学10問
危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法10問

受験のために必要となる資格はないため、性別や学歴、年齢なども一切関係なく誰でも受験が可能です。試験は5肢択一のマークシート方式で、合格には各科目それぞれ60%以上の正解が必要です。

試験時間は2時間です。試験に実技試験はなく、筆記試験のみで合否が決定します。試験に必要な持ち物は筆記用具のみとなります。

ほかの乙種危険物取扱者の資格を保有している方は、申請することにより一部の試験について免除を受けられます。その際の受験科目は「危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法」のみとなり、試験時間は35分となります。

危険物乙4の難易度と合格率

一般財団法人消防試験研究センターの公式サイトに記載されている危険物乙4の近年の合格率は以下のとおりです。

年度合格率
2016年28.9%
2017年34.4%
2018年39.0%
2019年38.6%
2020年38.6%
2021年36.1%
2022年30.7%
2023年32.2%
出典:一般財団法人消防試験研究センター|試験実施状況

危険物乙4は例年20万人以上の受験者がおり、合格者は7~8万人となるため、近年の合格率は30~40%で推移しています。乙種のなかでも4類以外の合格率は60~70%と高い合格率となっており、危険物乙4の合格率は一見すると低いように見えます。

この理由の一つとして、危険物乙4は仕事をしながら受験する方が多く、十分な学習時間が取れないまま試験を受けることで合格率が低くなっているものと考えられています。さらに、特に必要となる受験資格がないため、学校や会社などで受験させられている方も多く、十分な学習をしないままに受験されている方が多いため、結果的に合格率が下がっていると考えられています。

以上のことから、危険物乙4の試験は他の乙種の類と比べて難易度が高いわけではなく、しっかりと対策をすることで、1回の試験で合格をつかむことができます。

危険物乙4の受験の流れ

危険物取扱者として業務を行うには、試験に合格して資格を取得する必要があります。受験を検討している方は試験の概要を事前に確認し、手続きの漏れがないように準備しておきましょう。

危険物乙4を受験するためには、まずは受験の申請を行います。受験の申請は、受験を希望する都道府県へ書面申請または電子申請で行います。書面申請は願書などの書類を郵送する方法で、電子申請はインターネット上で申請を行う方法です。

ここでは、申請方法ごとに手順を解説していきます。

書面申請を行う場合

1.以下の必要書類をそろえる

  • 受験する都道府県内の消防署あるいは消防試験研究センターの本部・支部で受験案内や願書を入手する
  • 受験料を郵便局あるいはゆうちょ銀行の窓口で払い込んで「郵便振替払込受付証明書(受験願書添付用)」を入手
  • 「危険物取扱者免状」を取得していれば、免状のコピー

2.受験願書に必要事項を記入する

3.危険物取扱者の免状がある方はコピーを願書に貼り付ける

4.郵便振替払込受付証明書(受験願書添付用)を願書に貼り付ける

5.願書を郵送または持参する

6.試験日の10日ほど前に受験票が郵送されてくるため、縦4.5cm、横3.5cmの証明写真を1枚用意し裏面に以下の事項を記入し受験票に貼り付ける

  • 撮影日
  • 氏名
  • 年齢
  • 受験する種類

7.受験する

受験料を払い込む際にATMは利用できないため、平日の9~16時の間に郵便局かゆうちょ銀行で払い込む必要があります。

電子申請を行う場合

1.一般財団法人消防試験研究センターのWebサイトより画面の指示に従い必要事項を入力と試験日や試験を受ける場所を選択し手続きを行う

2.以下のいずれかの方法で受験料を支払う。仮受付の場合は3日後の23時59分までに支払いを完了する必要がある

支払方法受付状態
クレジットカード即時受付完了
ペイジー(情報リンク方式)即時受付完了
ペイジー(オンライン方式)仮受付
コンビニエンスストア(受付番号)仮受付

3.試験10日前になったら受験票を印刷し、縦4.5cm、横3.5cmの証明写真を1枚用意し裏面に書面申請時と同様の事項を記入し受験票に貼り付ける

4.受験する

危険物乙4の試験に合格するには

危険物乙4の試験に合格するために、学習を進める際に押さえておきたい2つのポイントがあります。

全ての科目を網羅的に勉強する

危険物乙4の試験は、3科目それぞれにおいて60%以上の正答率にならなければならないという条件があるため、すべての科目を網羅的に勉強する必要があります。合格のためにはです。

苦手な科目が1つある場合においてほかの2科目でカバーすることができないため、不得意科目を作らないように学習を進めることがポイントとなります。

全ての科目の基本となる知識を頭に入れ、そのうえで応用的な内容も繰り返し学習する方法がおすすめです。それぞれの科目に共通する部分もあるため、関連付けて覚えていきましょう。

語呂合わせや図などを活用して覚える

危険物乙4の試験問題のうち約6割は暗記で対策できる問題となっています。そのため、少しでも多く練習問題を解き進め、回答を記憶してしまうことが合格への一番の近道です。

しかし、長い文章をだらだらと読んでも非効率であり、記憶に定着しません。スムーズに暗記するためには語呂合わせなどを用いて覚え方を工夫することが重要です。勉強時間を十分に取れない方も多いため、文章だけではなく語呂合わせや図を用いて勉強することでなるべく効率よく合格することを目指しましょう。

もちろん、自分で語呂合わせや図を作成することも可能ですが、できれば図やイラスト、語呂合わせなどが載っている教材を活用したほうが効率的です。人気のある資格であるため、市販の教材も多くそろえられています。内容に大きな差はないため、自分の見やすい教材を選ぶことを心掛けましょう。

まとめ

危険物乙4は毎年20万人以上が受験する、さまざまな業種で活用できる人気の国家資格です。ニーズが高いにも関わらず、難易度が高くなく、取得しやすい点が人気の理由です。

暗記する項目が多いため、化学が苦手な方や危険物について詳しくない方でも試験対策をしっかりと練れば十分に合格できます。転職やキャリアアップに向けて取得を検討されている方は、効率的に学習し資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。

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