アーク溶接に資格は必須?試験概要や活かせる仕事を紹介

アーク溶接とは、「アーク放電」という電気エネルギーを利用して金属同士を接合する溶接方法の一つであり、製造業はもちろん、さまざまな職種で活用されています。

このアーク溶接の仕事に従事するためには、「アーク溶接等特別教育」という講習の受講が必要で、一般的にいう「アーク溶接作業者」の資格がなければいけません。

この記事では、アーク溶接の仕事に興味を持っている方のために、資格が必要な理由や取得の流れ、資格を活かせる仕事について解説していきます。

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アーク溶接に資格が必要な理由

業務としてアーク溶接の作業を行うには、「アーク溶接作業者」の資格取得が義務付けられています。この資格は更新が不要なため、一度取得すれば一生使える資格です。

資格取得のためには「アーク溶接等特別教育」を修了し、証明書を取得する必要があります。

アーク溶接の作業現場では、不適切な溶接作業方法による作業従事者の感電や高所からの落下、溶接中のアークによる火災および爆発などの重大災害が発生しています。

そのため、労働安全衛生規則において「危険または有害な業務」とされ、アーク溶接機を用いての作業を行う際には、労働者に特別教育を実施しなければなりません。万が一資格がない作業員にアーク溶接をさせた事業者は、罰則として6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることがあります。

アーク溶接の資格の概要

アーク溶接作業者を取得するにはどうすればよいのでしょうか。資格取得の条件や取得する場所などについて解説します。 

アーク溶接の資格取得の条件

アーク溶接の作業をするためには、まずは「アーク溶接等特別教育」を受け、アーク溶接作業者にならなければなりません。

この特別教育は18歳以上であれば誰でも受講が可能で、その後に終了書を取得すれば、アーク溶接作業者として業務に携わることができます。

アーク溶接の資格を取得する場所

アーク溶接の特別教育講習は、公的機関、技術系の専門学校、社団法人、商工会議所、一般企業などが行っています。主な開催者は以下の通りです。

各都道府県の労働基準協会

労働基準協会は、労働時間や賃金制度の改善などの労働条件の向上と、仕事に従事している人々の命の安全と安心、および快適な職場づくりなど支援することを目的としていますが、法に基づく各種技能講習等も実施しています。

各地区の労働基準協会では、特別講習を行っています。ただし、実施していない都道府県もあるため、スケジュールを確認しておきましょう。

技能講習協会などの各種協会

地域によりますが、労働基準協会のほかにも「技能講習協会」をはじめとした特別教育を専門的に行っている機関もあります。

Web講座

Web講座は、ネットで受講できるため時間や場所を選ばずに受講し、修了証を手に入れることが可能です。

アーク溶接等特別教育の講義内容

アーク溶接等特別教育には学科と実技があります。学科では、アーク溶接を行うにあたって必要となる知識と労働安全衛生法などの関係法令、実技ではアーク溶接装置の取り扱い方法および作業方法についての内容となります。

アーク溶接の資格取得にかかる日数と費用

アーク溶接等特別教育は、学科が4科目で11時間、実技が10時間の受講となり、学科のみなら1日半、学科と実技で3日間のスケジュールとなります。

費用に関しては、受講する主催団体や実施会場によって変わってきますが、一般的な目安としては、テキスト代込みで10,000〜25,000円程度です。

その他、試験が不合格だった場合の再受験代などに費用が発生する可能性もあります。詳細に関しては、事前の申込期間に確認しておくのがよいでしょう。

アーク溶接の資格取得の難易度

アーク溶接等特別教育は、法律や法令に基づいた試験などは基本的には行われず、まじめに受けていれば修了できるため、難易度は高くありません。

ただし、教育機関が主催している特別教育ではペーパーテストを実施するケースもあります。

また、実技では技術者指導のもとで実際に溶接を行うため、実技でつまずくことのないように必要な知識を学科講習でしっかりと学習しておく必要があります。

アーク溶接の資格を活かせる仕事

アーク溶接はさまざまな金属加工に利用することが可能で、技術をしっかりと身に付ければ職業の選択肢が増えます。

ここでは、アーク溶接作業者の資格を活かせる仕事を紹介します。

自動車メーカーや整備工場

金属加工を扱う企業のなかでも、まず挙げられるのが自動車メーカーや整備工場、自動車部品の製造工場です。自動車のパーツなどの加工や修理を行う際には、アーク溶接が必須です。フレームやサスペンション、ホイール、ドアなど自動車のほとんどの部分でアーク溶接が施されているので活躍できる機会は多いといえます。

造船業

造船においても溶接の工程が多く含まれるため、アーク溶接の技術が活かせます。造船はアーク溶接を行う仕事のなかでは規模が大きな部類であり、場合によっては数百メートルサイズの船を加工するケースもあります。

工務店や土木作業などの建設業

工務店や土木作業などを含む建設業界においても、さまざまな種類の金属部品を組み立てるために溶接が必要となります。工事現場では安全性の高い製品を仕上げるためにも正確な技術が求められます。

また、建設業では国から経費の一部助成される制度の「建設事業主等に対する助成金」にアーク溶接特別教育が含まれており、自己負担額が軽くなるケースもあります。

鉄工所や加工業などその他

業種によらず、業務内容に鉄鋼などの加工を扱っていれば、アーク溶接をさまざまな場面で使用するでしょう。

企業内で溶断およびアーク溶接機などの設備を所有している場合は大手メーカーに限らず、中小企業の工場においても必要な作業となるため、アーク溶接作業者の資格を保有していれば活躍できる場が広がります。

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アーク溶接の民間資格「溶接技能者」とは?

溶接技能者とは、さまざまな材料および方法で溶接を行える技術者のことです。JIS(日本産業規格)やWES(日本溶接協会規格)などの国内規格を根拠にして、学科試験および実技試験で溶接のスキルを評価します。

溶接技能者は日本溶接協会が認証する民間資格であり、対象の素材と選択された溶接手法によってカテゴリーが分けられます。

たとえば、アーク溶接では炭素鋼を対象にして被覆アーク溶接の方法で溶接を行うもので、2日間の講習と3日間の実技を受講すれば取得が可能です。ほかにもティグ溶接やティグ溶接と被覆アーク溶接との組み合わせなどの方法に応じた資格もあります。

試験は、下向姿勢の基本級と立向・横向・上向姿勢の専門級に分かれています。

溶接の技術によって試験の難易度が異なるため、溶接の技術力を高めるのに役立つ資格です。

溶接技能者の資格は実務経験者を対象にしています。誰でも容易に取得できる資格ではありませんが、自身の技量を証明できる資格のため、毎回多くの方が受験する人気の資格になります。

アーク溶接以外の溶接の資格について

アーク溶接以外にも溶接方法や材料別に、作業に必要な国家資格や民間資格、指導者および管理者向けの資格が存在します。企業によってはこのような資格を取得すると資格手当が支給されるケースや、管理職を目指せるなどのキャリアアップも図れるでしょう。

ガス溶接技能者

ガス溶接技能者も、溶接工の入門となる資格です。ガスを使用する溶接の仕事に従事する場合は必須となる国家資格となります。

学科試験に合格しなければならないため、アーク溶接の資格取得と比較すると難易度は高めです。

ガス溶接技能講習においては、学科8時間と実技5時間の講習があります。さらに学課の修了試験があり、全体の60%以上かつ3科目それぞれの正答率40%以上が合格基準です。

ガス溶接を用いた作業は、アセチレンなどの加熱性ガスと酸素を使った炎で金属を溶かし、金属の溶接や溶断を行います。アーク溶接と比較して時間はかかりますが、その分溶接するものの状態を確認しやすいメリットもあります。

ガス溶接技能者もアーク溶接同様に、自動車工場や造船所、鉄工所などさまざまな職場でニーズがあり、将来性も見込める資格です。

ガス溶接作業主任者

ガス溶接作業主任者とは、ガス溶接を行う際の作業方法の決定や指揮をする責任者になるための国家資格です。

ガス溶接作業主任者の試験は、学科試験のみで実技はありません。試験時間は3時間で20問が五者択一方式で出題されます。合格基準は全体の60%以上、4科目それぞれの正答率40%以上となっています。

工場や現場でアセチレン溶接装置やガス集合溶接装置を用いて溶接をする際は、作業員以外に現場責任者となるガス溶接作業主任者を置かなければなりません。そのため、工場や作業現場での需要が高い資格です。

この資格を取得するためには、ガス溶接技能講習を修了後3年以上の実務経験が必要です。ほかにも大学や高等専門学校で、工学または化学に関する学科を専攻し卒業したのち1年以上ガス溶接などの実務経験があれば受験できるといった取得条件があるため、資格の受験前に確認しておきましょう。

アルミニウム溶接技能者

一般社団法人軽金属溶接協会が主催するアルミニウム溶接技能者は、アルミニウム合金溶接についての技術と知識を証明する民間資格です。アルミニウムに対しての溶接は繊細な技術を要するため、自動車メーカーや建設業界を中心に資格保有者へ高い需要があります。

アルミニウムは軽量で強度がありますが、加熱中に酸化しやすく溶けやすい特徴があります。

扱いが難しいため、溶接を行うには専門的な技術や知識が必須です。

アルミニウム溶接技能者の資格には基本級と専門級があり、それぞれの受験資格は以下のとおりです。

基本級

  • 1カ月以上アルミニウム溶接技能を習得した満15歳以上の方
  • 軽金属溶接協会主催の実技講習会で修了書を取得した方

専門級

  • 3カ月以上のアルミニウム溶接技能を習得した満15歳以上で受験種類に対応の基本級の資格を保有されている方

ただし、基本級の試験の合格を条件に基本級と専門級を同時に受験することも可能です。

基本級・専門級ともに実技と学科の試験があり、合格率は80%程度となっています。

ボイラー溶接士

ボイラー溶接士は、ボイラーや第1種圧力容器の製造並びに改造に関わる溶接作業を行うための国家資格です。ボイラーの溶接はミスがあると重大な事故につながりかねないため、高度な知識および技術が必要であり、ボイラー製造工場などでボイラー溶接士の資格保有者のニーズが高まっています。

資格を取得するには学科試験および実技試験の両方における合格が必要となるため、アーク溶接やガス溶接技能者と比べると難易度が高めです。

ボイラー溶接士には、普通ボイラー溶接士と特別ボイラー溶接士があります。後者は1段上級の資格であり、取得すればすべてのボイラータイプの溶接業務に従事できます。

受験資格として、普通ボイラー溶接士ではガス溶接と自動溶接以外の実務経験が1年以上必要です。上位資格の特別ボイラー溶接士では、下位資格の普通ボイラー溶接士の資格取得から1年以上の実務経験を積むと受験資格を得られます。

2022年度の合格率は、普通ボイラー溶接士の学科試験が54.8%、実技試験が62.6%です。また特別ボイラー溶接士の学科試験は69.6%、実技試験が96.5%となっています。

溶接作業指導者

溶接作業指導者は、日本溶接協会が認定する民間資格であり、溶接の現場において作業者が安全で正確に作業を行えるように指導・監督する役割を持ちます。具体的には、溶接の工程指示や作業方法の指導、実施記録の作成などが主な業務です。

そのため、作業者としての経験はもちろん、溶接作業に関する高度な知識および技能を求められる資格となります。受験資格は満25歳以上で所定の溶接技能資格を取得しており、実務経験年数を満たしていることです。

3日間の講習を受け、学科試験に合格することで資格が取得できます。合格率はほぼ100%であるため、講習をしっかりと受講していれば問題なく合格できるでしょう。。

資格の有効期限は3年間で、3年ごとのサーベイランス、9年目には再認証申請が必要となります。指導できるレベルの溶接スキルを保有していることの証明になるため、作業者から指導者へのキャリアアップに役立つでしょう。

まとめ

業務としてアーク溶接の作業を行うには、資格の取得が必要です。アーク溶接の特別教育講習はさまざまな機関で開催されており、申し込む機関やコースによって、資格取得にかかる期間や費用が変わります。自動車整備工場や造船業など、多くの職種で需要がある資格のため、就職や転職を考えている人はアーク溶接の資格を取得するのがおすすめです。

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