自動車の電子制御装置が急速な進化を遂げている現在、自動車の電気装置整備に精通した自動車電気装置整備士への注目度が高まっています。
今回は、自動車電気装置整備士が行う業務や国家試験の内容、メリットなどを中心に解説します。
自動車電気装置整備士とは
自動車電気装置整備士は、車両に搭載された電気装置の整備に特化した国家資格です。自動車電気装置整備士資格を取ることによって、一般の自動車整備士が対応できない高度な電気装置の点検・修理を行うことができます。
専門知識やスキルを持つ自動車電気装置整備士は、進化し続ける自動車の電気装置のエキスパートとして、これまで以上に需要が高まっていくことが予想されます。
自動車電気装置整備士が担う3つの業務
自動車電気装置整備士が担当する主な業務としては、以下の3つが挙げられます。
1. 電子制御装置の点検・整備
自動車に搭載された電子制御装置の種類は、多種多様です。自動車電気装置整備士は、ハイブリッドシステムや駆動系モーター、ナビゲーションシステムといった電子制御装置の点検・整備を担当します。
2. 冷暖房装置の修理・点検
自動車に備えられた冷暖房装置の修理・点検も、自動車電気装置整備士が担う主な業務の一つです。
3. バッテリーの交換・点検
従来の自動車からハイブリッド車や電気自動車といった次世代カーまで、さまざまな種類の自動車バッテリーの修理・点検を行います。
自動車電気装置整備士と自動車整備士の違い
自動車整備士2級以上の資格を有していれば、電気装置の点検や整備を行うことが可能です。自動車電気装置整備士は、自動車の電気装置についての専門知識やスキルを持つことを示す資格で、プロとして整備や修理を行うことができます。
ただし、自動車電気装置整備士の資格だけでは、部品の分解や取り外しなどが必要な整備を行うことができません。
専門家として電気装置の整備業務に取り組みたい場合は、まず自動車整備士の資格を取ったうえで、自動車電気装置整備士の資格取得をめざすことをおすすめします。
自動車電気装置整備士の資格について
自動車電気装置整備士資格は、自動車整備士とは異なる国家資格で、専門性の高い分野に特化した整備業務を行う国家資格である特殊整備士の一つです。
他の特殊整備士資格には、自動車の車体やフレームの整備・修理を専門的に行う自動車車体整備士、タイヤに関する専門知識を持つ自動車タイヤ整備士があります。
自動車電気装置整備士試験の内容や合格率
自動車電気装置整備士試験の概要を、以下の4点から確認しましょう。
1. 技能検定試験と登録試験の違い
自動車電気装置整備士の資格を取る条件は、国家試験に合格することです。自動車電気装置整備士の試験には、2つの種類があります。国土交通省が実施する「技能検定試験」と、一般社団法人日本自動車整備振興会連合会(日整連)が実施する「登録試験」です。
日整連は国土交通大臣の登録を受けた登録試験実施機関であるため、日整連が実施する登録試験に合格すれば、国の技能検定試験が免除されることになります。登録試験に合格後、有効期間内に免除申請をしてください。登録試験に合格しても申請をしなければ、技能検定試験が免除されないので、注意しましょう。
2. 試験の内容
日整連が実施する登録試験の試験内容を、以下の表にまとめました。
試験日 | 年1回 ※学科試験1日・実技試験1日 |
試験内容 | 【学科試験】基礎工学、法規、検査、電気の基礎、バッテリー、充電装置、始動装置、灯火/保安装置、冷暖房装置(フロン類回収、破壊法)、電子制御装置、法令【実技試験】中間・修了・実技試験 |
受験資格 | ・国土交通省が認定する専門学校・大学などの整備士を養成する課程を修了した者・1年6か月以上、あるいは2年以上の実務経験 ※学歴によって異なる、実務経験証明書が必要 |
出題数 | 【学科試験】40問【実技試験】3問 |
合格基準 | 【学科試験】・40点満点に対して28点以上の成績【実技試験】・30点満点に対して18点以上の成績・問題1~3の各問題で40%以上の正答率 |
3. 近年の受験者数・合格率の推移
近年の自動車電気装置整備士の登録試験の受験者数と合格率は、下表の通りです。
年度 | 申請者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率(%) |
令和4年度 | 502 | 497 | 331 | 66.6 |
令和3年度 | 315 | 311 | 271 | 87.1 |
令和2年度 | 56 | 53 | 42 | 79.2 |
平成31年度 | 52 | 52 | 31 | 59.6 |
平成30年度 | 48 | 47 | 23 | 48.9 |
平成29年度 | 73 | 71 | 50 | 70.4 |
平成28年度 | 86 | 85 | 62 | 72.9 |
平成27年度 | 66 | 66 | 41 | 62.1 |
平成26年度 | 20 | 20 | 17 | 85.0 |
平成25年度 | 34 | 34 | 26 | 76.5 |
平成24年度 | 25 | 25 | 16 | 64.0 |
4. 試験の対策方法
自動車電気装置整備士の学科試験に向けた最も効果的な勉強方法は、過去問題を解くことです。
国土交通省や全国自動車電装品整備商工組合連合会のサイト上で過去問題と解答が公開されており、無料で利用できます。
過去問題をできるだけ多く解くことで、出題の傾向を把握し、試験準備を着実に進めることができます。
自動車電気装置整備士の講習会
自動車電気装置整備士の技術習得を目的とした講習会が開催されています。
全国自動車電装品整備商工組合と自動車整備振興会が主催するこの講習会は、毎年10月から翌年3月までの時期に行われています。受講費用は4~10万円程度です。
講習会の受講後2年以内に免除申請を提出すれば、自動車電気装置整備士試験の実技が免除されます。
自動車電気装置整備士になる3つのメリット
自動車電気装置整備士になることで期待できる、以下の3つのメリットについて説明します。
1. 自動車電気装置の専門家としてのスキルを習得できる
ハイブリッド車や電気自動車といった次世代カーの普及によって、整備士には常に最新の電子装置に対する知識やスキルが求められるようになっています。
自動車の電気装置に精通した自動車電気装置整備士のニーズは、今後さらに高まることが予想されます。キャリアアップを実現しやすい資格だといえるでしょう。
2. 資格・職能手当による収入アップが期待できる
最新鋭の電子装置の整備をプロフェッショナルとして実施できる自動車電気装置整備士は、整備業務を行う多くの企業にとって魅力的な人材です。
高度な知識やスキルを持った自動車電気装置整備士であれば、資格手当や職能手当を受給できるケースも多く、収入アップが期待できます。
3. 転職時のアピールポイントになる
自動車整備士2級以上と自動車電気装置整備士資格を有している人材は、転職をする際に応募先から高く評価されます。
電子装置の整備を行うことの多いディーラーや整備工場への転職時に、非常に大きなアピールポイントになるでしょう。
自動車電気装置整備士の転職に関する悩みはプロへの相談がおすすめ
自動車電気装置整備士としての経験やスキルを活かして、転職を成功させたいとお考えの際は、整備士転職のノウハウを持つプロへの相談をおすすめします。
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まとめ
今回は、自動車の電気装置整備に特化したエキスパートである自動車電気装置整備士について解説しました。
自動車の電気制御装置の進化や次世代カーの普及などによって、自動車電気装置整備士のニーズは今後さらに高まることが予想されます。この資格の特徴や取得するメリットなどを正しく理解し、自身の整備士としてのキャリアビジョンを描く際の参考にしてください。