認証工場と指定工場の違いとは?整備士の業務やメリット・デメリット

自動車の認証工場と指定工場には、どのような違いがあるのでしょうか?民間整備工場への転職を検討している整備士が注目すべきポイントは、どのような点でしょうか?

今回は、認証工場と指定工場の相違点や主要業務、整備士が留意すべきメリット・デメリットなどについて、具体的に解説します。

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認証工場と指定工場の違いとは?

認証工場と指定工場の最大の違いは、車検検査への対応の有無です。

認証工場は車検の実施に対応していないため、自動車検査登録事務所や車検場に自動車を持ち込んで、車検を行います。指定工場は法令が定めた保安基準をクリアしており、工場内の施設で車検が可能です。

認証工場と指定工場のその他の相違点について、以下の項目別に説明します。

  • 相違点1.完成検査場の有無
  • 相違点2.検査に必要な機器の有無
  • 相違点3.従業員の保有資格や人数

1. 完成検査場の有無

認証工場と指定工場では、完成検査場の有無に違いがあります。
いずれの工場においても、自動車整備に使用する作業場は共通して必要となります。指定工場では、車検に必要不可欠な完成検査場を設置することが必須条件です。

認証工場と指定工場に必要な作業場を、以下の表にまとめました。

工場の種類認証工場指定工場
設置が必要な作業場・車両整備作業場・点検作業場・部品整備作業場・車両置き場・車両整備作業場・点検作業場・部品整備作業場・車両置き場・完成検査場

2. 検査に必要な機器の有無

設置する機器に関する認証工場と指定工場の違いは、検査に必要な機器の有無です。
どちらの工場も、点検整備に使用する機器を有しています。指定工場は、検査に必要な機器を備えなければなりません。

認証工場と指定工場に必要な機器を、以下の表にまとめました。

工場の種類認証工場指定工場
設置が必要な機器・点検整備に必要な機器・点検整備に必要な機器・検査に必要な機器

3. 従業員の保有資格や人数

認証工場と指定工場では、必要となる従業員・工員の保有資格や人数などが異なります。
従業員に関する認証工場と指定工場の最大の違いとしては、自動車検査員の有無が挙げられます。自動車検査員とは、車検を行った自動車が道路運送車両法の定める基準を満たしていることをチェックする完成検査などを実施する資格職です。

自動車検査員が担当するのは、以下の業務です。

  • 整備が完了した車両が保安基準に適していることを確認する完成検査
  • 資格を有していない工員、整備士の監督・指導
  • 車検の結果をまとめた書類の作成・管理
  • 車検の検査基準の変更などへの迅速で適切な対応

認証工場と指定工場に必要な従業員の相違は、下表の通りです。

工場の種類認証工場指定工場
必要な従業員・在籍する従業員に1~2級の自動車整備士が1名以上いる※従業員数が多い場合は、従業員の1/4以上が1~2級の自動車整備士資格を保有している・自動車整備主任者の届出を提出している・2名以上の従業員が分解整備に従事している・自動車検査員が1名いる・1~2級の自動車整備士が1名以上いる・工員が4名以上いる※自動車整備士の有資格者含む※従業員数が多い場合は、工員のうちの1/3以上が1~2級の自動車整備士資格を保有している・自動車整備主任者の届出を提出している
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認証工場の業務内容とメリット・デメリット

認証工場が行う主な業務と、認証工場の整備士が確認すべきメリット・デメリットについて説明します。

認証工場での主な業務

認証工場で整備士が担当する主要業務の概要を、以下の表にまとめました。

業務項目概要
点検整備・車検前に行われる点検業務・整備業務・6か月点検、1年点検といった定期的な点検・オイルやタイヤの点検・交換業務
緊急整備・故障・事故の際に部品交換や修理を行う整備
特定整備・エンジン・ミッション関連の整備・スキャンツールを用いたエーミング・カメラやレーダーを取り外して実施する電子制御装置の整備など、安全性を維持するための整備
塗装・修理・事故や経年劣化によって老朽化・変形した車両のボディを修理して、表面塗装を行う
車検場への自動車の持ち込み・整備した自動車を車検場に持ち込む業務

認証工場で働くメリット

認証工場で働くことで期待できる主なメリットには、以下の2点があります。

1. 自動車整備に関する幅広い知識やスキルを習得できる

認証工場は、定期点検から緊急整備、特定整備、板金塗装までの整備業務全般に対応しています。そのため、認証工場で働く整備士は、自動車整備に関する幅広いスキルを習得できます。

認証工場の大多数は、メーカーやブランドを問わず車両整備を実施しているので、さまざまな車種に柔軟に対応する整備スキルを磨くことが可能です。

2. 修理・整備に特化した業務を行いやすい

認証工場の中には、自社の強みとなる整備業務を具体的に定めているケースが少なくありません。
電子制御装置の整備や板金塗装などの特定分野に力を注いでいる認証工場で働くことで、専門的なスキルや最新の自動車技術に関する知識を習得できます。

整備業務の中でも特定分野に精通した経験やスキルを持つ整備士は、転職する際にも高く評価される傾向があります。

認証工場で働くデメリット

認証工場で働く際に整備士が留意すべきデメリットとしては、以下の2点が挙げられます。

1. 車両を陸運局に持ち込む業務が生じる

認証工場では工場内で車検検査を行わないため、整備業務に加え、車検を受ける自動車の陸運局への持ち込みや引き取りなどを担当する場合があります。

また、車検が完了した車両を顧客に納車する業務を行うケースもあります。

2. 顧客対応を担当するケースがある

工場によっては、顧客からの問い合わせ対応や整備・修理内容の説明などを、整備士が行うことがあります。

比較的少数のスタッフで運営している認証工場では、来店者の受付業務や顧客への営業活動を整備士が担当する場合もあります。

指定工場の業務内容とメリット・デメリット

指定工場で整備士が担う主な業務内容、想定されるメリット・デメリットについて解説します。

指定工場での主な業務

指定工場の業務は、認証工場の業務内容に加えて、車検検査があります。車検のための点検整備も重要な業務の一つです。

指定工場は車検関連の整備業務がメインとなる場合が多く、あらゆる整備業務を実施しているとは限りません。修理や部品交換に関しては、内容によって対応していない、あるいは対応件数が少ない業務があります。

指定工場で働くメリット

整備士が指定工場で働くことで期待できる主なメリットには、以下の2点があります。

1. 点検・整備から車検までの業務を経験できる

指定工場では、通常の整備から車検検査まで、整備業務全般に関する知識や技術をトータルで習得できます。
また、車検検査に携わることで、将来的に車検の点検整備が完了した車両の完成検査を行う自動車検査員の資格取得をめざすことも可能です。

自動車検査員試験の受験資格には、勤務先が指定工場であることも含まれます。自動車検査員を志望する整備士には、指定工場で経験を積むことをおすすめします。

2. 工場によっては特定メーカーに特化したスキルを習得できる

ディーラーに併設された指定工場では、取り扱うメーカーやブランドが限定されます。特定のメーカーや車種に特化した高度な整備スキルを身につけやすい職場環境だといえるでしょう。

また、ディーラーの指定工場で働く整備士は、メーカーやディーラーが独自に設けている研修や資格・検定制度を活用できます。研修や独自資格の取得を通して、取り扱う車種の最新技術や整備スキルの習得が可能です。

指定工場で働くデメリット

指定工場で働く際に整備士が注意すべき主なデメリットとしては、以下の2点が挙げられます。

1. 車検検査以外の整備業務を行わない工場がある

車検検査と車検のための点検整備が主要業務となる指定工場の中には、他の整備業務に対応していないケースがあります。

車検に関連する業務以外の整備業務にも携わることを希望する場合は、転職を検討している指定工場が対応している業務について、応募前に確認しましょう。

2. 納車や顧客対応を行う場合がある

指定工場の整備士は、整備業務以外に、車検が完了した車両の顧客への納車や問い合わせや来店者の受付などの顧客対応を担当する場合があります。

車検をはじめとする整備業務についての顧客への説明、問い合わせに対する回答を円滑に行うためのコミュニケーションスキルを習得することが重要です。

整備工場への転職を検討する際は、整備士転職に特化したエージェントへの相談がおすすめ

整備工場への転職に関する疑問や悩みを抱えてしまった場合は、整備士転職に特化したエージェントへの登録、相談をおすすめします。

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まとめ

今回は認証工場と指定工場の相違点、2種類の工場の業務と整備士のメリット・デメリットを解説しました。

認証工場と指定工場の大きな違いは、車検検査の実施の有無です。いずれの整備工場でも各種車両整備や定期点検ができる点は、基本的に共通しています。

自身の将来の目標や希望する条件に合致する工場について慎重に検討し、整備士としてのキャリアアップをめざしてください。